過去の作品

素敵な宇宙船地球号「ウミガメを呼ぶ浜 〜山と海をつなぐ砂〜 」

目から大粒の涙を流して懸命に卵を産むウミガメ。
毎年夏、日本の海岸に産卵のためにやってくるこのウミガメは、主にアカウミガメと呼ばれるウミガメです。その行動範囲は広く、日本近海から北米沿岸にまで及びます。しかし産卵するのは決まって日本の海岸です。アカウミガメにとって日本は、北太平洋の中で唯一の産卵場所なのです。
しかし今、そのアカウミガメの上陸数が大きく減少しています。たとえばアカウミガメを市の天然記念物にしている静岡県御前崎の海岸では、1988年にのべ513頭を数えた上陸数も、97年には96頭を数えるまでに減っています。昔は当たり前のように目撃されていたのに、今では一頭も上陸しなくなってしまった海岸も珍しくありません。原因はいったい何なのか。静岡県相良町の海岸でウミガメの保護活動をしている「カメハメハ王国」の山本明男さんは、問題が海岸ではなく、むしろ別のところにあることに気づきました。
海と山、それを結ぶ川。そこに異変が起きている・・・。 異変は砂浜に現れています。じつはアカウミガメの産卵場となっている砂浜は今、日本の海岸から次々と消えつつあります。かつて美しく豊かな砂浜を誇った日本の海岸は急激なスピードでやせ細り、消滅しています。 豊富できれいな砂が海岸になければ、アカウミガメが卵を産むことはできません。砂浜の消失はアカウミガメの生態に大きな影響を及ぼしています。そして消失の原因をたどっていくと、山にぶつかります。砂浜の砂は、山から運ばれ、川を通って海岸に到着します。しかしその自然の仕組みが今、ダムなどの人間の構造物によって機能しなくなっているのです。
今や国から絶滅危惧種に指定されているアカウミガメ。彼らを取り巻く現状を見てゆくと、この国で太古の昔から育まれてきた山と海との良好な関係が大きく失われているのがわかります。 番組では、減りゆくウミガメと保護に取り組む人々の姿を通して、人と自然との共生について考えます。

●撮影 藤井浩二 ●音声 柳瀬雅史 ●音効 松丸利行 ●AD  奥富浩司

●構成 田淵寛 ●演出 山根幸太郎  ●プロデューサー 藤枝融